松下幸之助さんが「運がいい」と自分で言う人を面接で採用していたという逸話は有名で、彼の人材観や成功哲学の一端を示しています。このエピソードとEQ（心の知能、Emotional Intelligence）との関連性を考えると、自己認識や楽観主義、レジリエンス（精神的回復力）といったEQの要素が深く関わっていることがわかります。

1. 運がいいと感じることと自己認識

まず、EQの中心的な要素として「自己認識」があります。
自己認識とは、自分の感情や強み、弱みを正確に理解する能力のことです。
「運がいい」と自分で言う人は、状況を客観的に見つめ、自分の経験や成功を前向きに捉える傾向があります。このような自己認識の高さは、成功を引き寄せる一因ともなりえます。
「運がいい」と言う人は、自分の成功や失敗を冷静に分析し、ポジティブな側面を見つける力を持っています。この能力が高い人は、失敗や逆境に直面してもその中から学びを得て、次に進むことができるのです。
松下幸之助さんがこのような人を評価したのも、逆境に強く、常に成長を目指す姿勢がビジネスの成功に直結すると考えたからかもしれません。

 2. 楽観主義とEQ

EQの重要な要素として「楽観主義」も挙げられます。
楽観主義は、未来に対して前向きな姿勢を持ち、困難な状況でも希望を持って行動する力です。
松下幸之助さんが「運がいい」と感じる人を好んだ理由には、この楽観主義が関係していると考えられます。
楽観的な人は、失敗を一時的なものであり、最終的には成功に向かう一歩だと捉える傾向があります。
彼らは、困難な状況に陥っても希望を持ち続け、それを乗り越えるための努力を惜しみません。
このような楽観主義は、周囲の人々にもポジティブな影響を与え、チーム全体のモチベーションや生産性を向上させる効果があります。松下幸之助さんは、こうしたポジティブなエネルギーを持つ人が組織に与える影響を高く評価したのでしょう。

 3. レジリエンスと運の良さ

「運がいい」と言う人は、レジリエンス（精神的回復力）も高い傾向があります。
レジリエンスとは、困難な状況やストレスから素早く立ち直る力です。
EQの高い人は、失敗や挫折を経験しても、それを自己成長の糧とし、再び前進する力を持っています。
松下幸之助さんが採用した「運がいい」と自覚する人々は、逆境に直面してもその状況を自分の成長のチャンスと捉え、冷静かつ前向きに対応できる人材だったと推測されます。
彼らは、困難に直面しても自己効力感（自分にはやり遂げる力があるという信念）を持ち続け、それが周囲にも安心感や信頼感を与えていたのでしょう。
また、レジリエンスの高い人は、常に新しい挑戦に積極的であり、成功するまで諦めない姿勢を持っています。松下幸之助さんが「運がいい」と感じる人を評価した理由には、こうした人々の不屈の精神と持続力が、企業の長期的な成長に貢献すると考えたからだと推察できます。

 4. 人間関係管理とポジティブな影響力

EQの中には「人間関係管理」という側面もあります。
「運がいい」と感じる人は、他者との関係においてもポジティブな影響を与える力を持っています。
彼らは、困難な状況でも周囲を励まし、共に成功を目指す姿勢を見せることで、チーム全体の士気を高める役割を果たします。
松下幸之助さんは、自分の会社で働く人々が、単にスキルや知識だけでなく、周囲に良い影響を与える人物であることを重視していました。「運がいい」と感じる人は、自分自身の成功体験や前向きな態度を他者と共有することで、組織全体のパフォーマンス向上に寄与する可能性が高いのです。

 5. 運と努力のバランス

松下幸之助さんの哲学に基づくと、「運がいい」と感じることは偶然ではなく、むしろ意図的に築かれるものだと言えます。EQの高い人は、運を引き寄せるために日々の努力を惜しまない姿勢を持っています。彼らは、自分の感情を管理し、困難を乗り越えるための努力を続け、その結果として「運がいい」と感じるのです。 

松下幸之助さんが「運がいい」と自ら言う人を採用していた理由には、EQが深く関わっています。
自己認識や楽観主義、レジリエンス、そして人間関係管理といったEQの要素が高い人は、困難な状況でも前向きに対処し、周囲に良い影響を与える力を持っています。

彼らは、運を自分で引き寄せることができると信じ、その信念が実際に成功をもたらすのです。

「運がいい」と感じることは、偶然の産物ではなく、EQを高めることで誰でも引き寄せることができるものです。ビジネスや日常生活において、自らのEQを意識し、高めていくことで、松下幸之助さんが見抜いた「運のいい人材」へと近づくことができるでしょう。