EQで考える「感情との上手な付き合い方」
「イライラしないようにしよう」
「落ち込まないようにしよう」
「不安にならないようにしよう」
私たちは日常の中で、できるだけ感情をコントロールしようとします。
特に仕事や人間関係では、
「感情的になってはいけない」
「冷静でいなければいけない」
と考えている人も多いのではないでしょうか。
もちろん、怒りのまま相手を責めたり、不安に振り回されて行動できなくなったりすることは避けたいものです。
しかし、ここで一つ考えてみてほしいことがあります。
そもそも、感情そのものをなくす必要はあるのでしょうか。
EQ(心の知能)を考えるうえで大切なのは、「感情をなくすこと」ではなく、「感情を理解し、よりよい行動を選ぶこと」です。
第1章 感情は「悪いもの」ではない
怒り、不安、悲しみ、寂しさ、焦り、嫉妬。
私たちは、こうした感情を「できれば感じたくないもの」と考えがちです。
しかし、感情は決して悪者ではありません。
たとえば、誰かの言葉に強く腹が立ったとします。
そこで、「怒ってはいけない」と感情を抑え込むだけでは、自分がなぜ怒ったのかは分かりません。
少し立ち止まって、「私は、なぜこんなに腹が立ったのだろう?」と考えてみると、
「大切に扱ってほしかった」
「自分の努力を認めてほしかった」
「約束を守ってほしかった」
「自分の考えを尊重してほしかった」
といった、自分が大切にしているものが見えてくることがあります。
つまり感情は、自分が何を大切にしているのかを教えてくれるサインでもあるのです。
第2章 同じ出来事でも、感情は人によって違う
同じことが起きても、すべての人が同じ感情になるわけではありません。
ある人は気にならないことでも、別の人は傷つく。
ある人は怒る場面でも、別の人は不安になる。
なぜでしょうか。
そこには、その人がこれまで経験してきたことや、価値観、考え方、期待などが関係しています。
私たちは出来事そのものだけではなく、「その出来事を自分がどう受け止めたか」によって感情が変わります。
だからこそEQでは、相手を理解する前に、まず自分自身の感情に気づくことを大切にします。
「私は今、何を感じているのか」
「なぜ、そう感じたのか」
この自己理解が、EQを高める第一歩になります。
第3章 EQが高い人は「感情的にならない人」ではない
EQが高い人というと、「いつも冷静な人」「怒らない人」「落ち込まない人」というイメージを持つ人もいるかもしれません。
しかし、EQが高い人も当然、怒ります。
不安になることもあります。
落ち込むこともあります。
大切なのは、感情が生まれたあとの行動です。
感情が生まれる
↓
自分の感情に気づく
↓
なぜそう感じたのかを理解する
↓
どう行動するかを選ぶ
このプロセスが、とても重要です。
怒ったから、怒鳴る。
不安だから、逃げる。
傷ついたから、相手を攻撃する。
このように、感情と行動が直結してしまうと、感情に振り回されやすくなります。
一方で、「今、自分は怒っているな」「私は何に反応したのだろう」「本当は相手に何を伝えたいのだろう」と一度立ち止まることができれば、行動の選択肢が増えていきます。
第4章 感情を変えるのではなく、行動を選ぶ
私はEQを学ぶ大きな意味の一つは、自分の行動を選べるようになることだと考えています。
怒ってはいけないのではありません。
不安になってはいけないのでもありません。
悲しんではいけないわけでもありません。
その感情があることに気づき、「では、自分はどうしたいのか」を考える。
たとえば、怒りを感じたとき、すぐに相手を責めるのではなく、「私はこの部分を大切にしているので、こうしてもらえるとうれしい」と伝えることもできます。
不安になったとき、「自分はダメだ」と考えるのではなく、「私は何を不安に感じているのだろう。今できることは何だろう」と考えることもできます。
感情そのものを完全にコントロールすることは難しくても、感情を理解したうえで、自分の行動を選ぶことはできます。
そして、その積み重ねが、人間関係や仕事、自分自身との付き合い方を少しずつ変えていきます。
感情が動いたときには、「こんなことで怒ってはいけない」「こんなことで落ち込む自分は弱い」と否定する前に、「私は今、何を感じているんだろう?」「なぜ、この感情が生まれたんだろう?」「私は本当は、何を大切にしたいんだろう?」と、自分に問いかけてみてください。
EQとは、感情を抑え込むための技術ではありません。
感情に気づき、理解し、そのうえでよりよい行動を選んでいく力。
感情に振り回されない人になることよりも、感情と上手に付き合える人になること。
そこから、人間関係も、仕事も、自分自身との関係も変わっていくのではないでしょうか。